日本切手ノート (69)      17.02.15

★ ホルワルドの封筒


図1 龍500文2枚貼エンタイヤ

 先頃、ベルリンのオークションで上の封筒が売られ、話題になりました。
 宛名は横浜の「BACHARACH.OPPENHEIMER & Co.」で、龍切手500文が2枚貼られた書留便です。
(図1)
 龍切手の500文と5銭は1873年5月31日に使用禁止になっていますが、神戸局の外人窓口は無事に通過
したようです。1884年10月16日の神戸の書留印で証示され、18日の横浜の書留印で到着が確認されてい
ます。

   
旧小判3銭  第283回(1990.4)タカハシスタンプオークションより  左オークション誌より76番の拡大図
図2

 この封筒の消印『K』は、西野本4Bに似ていますが、どうも同じものとは思えません。この頃の『K』は何種
か記録されていますが、単片で龍500文と同じ消印と思われる切手が複数ありますので、お見せします。
(図2)

 上記封筒には差出人の名前がありませんが、オークション誌の記述には「MAX VORWALD」の名前が見られ
ます。この人の名前は昔から有名で、『ホルワルドの封筒』として親しまれています。その幾つかをお見せしま
しょう。


図3 龍200文を貼った封筒

 彼は神戸の居留地の40番に住んでいましたので、ここ宛の封筒が何通か残っています。受け取った封筒
としては、上の龍500文の封筒と同じ競売で龍200文を貼った封筒が売られています。
(図3)この封筒の横浜
の証示印は星印ですが、同じく龍200文を貼った封筒に串団子の横浜印を押した物の記録もある、と識者
から聞いています。


図4 旧小判5厘4枚貼の神戸の市内便

 一番有名なのは、澤本「小判切手」に掲載されている旧小判5厘4枚貼の神戸の市内便です。(図4)


図5-1 横浜発のU小判1銭2枚貼


図5-2 横浜発のU小判2銭貼(表)

図5-3 横浜発のU小判2銭貼(裏)


図6 明治初期の在留外国人人名録に出ている「BACHARACH.OPPENHEIMER & Co.」

 横浜発のU小判1銭2枚貼と2銭貼の封筒もお見せしましょう(図5-1〜3)。2銭貼の封筒の裏には、
「BACHARACH.OPPENHEIMER & Co.」と印刷されています。この会社は寺岡寿一先生編集の「明治初期
の在留外国人人名録」にも記録されています。
(図6)




図7 桜切手を加貼した桜4銭の封皮

 差出の封筒で彼の名前を書いた物は見付かりませんでしたが、桜切手を加貼した桜4銭の封皮2通は、
30数年近く前にウェーバリーの競売で売られた外郵便ですが、当時ホルワルド差出のカバーとして話題になりまし
た。
(図7)

 この『ホルワルドの封筒』と言われる物は、差出・到着の殆どの封筒に船の名前が書いてあります。所謂、国
内郵便のルートは使わなかったのでしょうか?開港地間郵便と言われている物についても、もう一度考えて
みる必要があるかも知れません。
 

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