日独戦争と俘虜郵便の時代 53
      04.03.04

27) 
郵便検閲制度(その1)


 第一次世界大戦下の日本発通常郵便物には、様々な郵便検閲の痕跡を見る事
ができる。郵便物上に残された諸外国の検閲印や検閲封緘紙などは、田沢切手コ
レクターには特に馴染みの深いものであろう。日本独自の郵便検閲制度について
は、専門的な研究が遅れていた分野であったが、近年ベテラン郵趣家の丹下甲一
氏により詳細な研究発表があり、注目を集めたのは記憶に新しい。丹下氏は同論
文の中で自ら幾つかの課題を残されているが、戦時下の日本郵便検閲制度と検閲
印分類等、その実像は解明されたといってもよいだろう。


 今回丹下氏にご協力を頂き、郵便検閲印を軸にその代表例を紹介できる事にな
ったが、分類方法や記事内容については氏の発表論文に準ずるものとする。


 (我が国の第一次世界大戦時の郵便検閲制度 郵趣研究4546・同郵趣研究ブッ
クレット
切手の博物館 2002

Aタイプ検閲印
型式 日本語表記 「許可」「郵便局名」
英語表記  「PASSED BY CENSOR」「郵便局名」
使用時期 大正5年(1916)末頃〜大正8年(1919)末頃
確認使用局 東京、横浜、大阪、神戸、門司、長崎、京城、天津、北京、青島、
(上海、九江)
検閲対象 原則として日本局発信便
差出人書 「許可申請」「for permission
根拠法令 逓信省令第63号(大正51218日公布、同1225日施行)
検閲目的 敵国側に対する対人的情報コントロール


図208


 208 神戸差出外信便(平和記念特印/8.7.17.米国経由スウェーデン宛使用例
      
1919、神戸郵便局Aタイプ検閲印、差出人による書込“for permission

Bタイプ検閲印
型式 ○検タイプ(検/番号、等)
使用時期 大正6年(19175月頃(神戸局)〜大正8年(1919
大正612月を境に使用局は神戸より長崎に移行
確認使用局 神戸、長崎、(大阪)
検閲対象 日本局発信便、連合国より到着便、中継便等
根拠法令 連合国経済会議決議(大正616日官報)
勅令41号(大正6423日)対敵取引禁止令
(関連事項:米国参戦、大正64月)
検閲目的 輸出入を中心とした物流制限の通商コントロール




図209

 209 長崎差出外信印刷物(櫛型・NAGASAKI/17.3.19.米国宛使用例
      
大正8、長崎郵便局Bタイプ検閲印、米国検閲封緘紙

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